デザイン経営

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最近、英語を省略したビジネス用語がどんどん増えてませんか? いや、もしかすると昔からあったんでしょうか。正直言ってぜんぜん覚えられません。
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そんな中、近ごろ耳にする「デザイン経営」という言葉。とても分かりやすい上にGoogleで検索すると沢山の記事や書籍がヒットします。最近ではオンラインセミナーも多数開催されていて、企業や自治体で経営・企画に携わる方であれば基本的な考え方については既にご存知なのではないでしょうか。
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さてさて、今日はこの「デザイン経営」について、デザイナー/ディレクターの立場から思うことを書いてみたいと思います。
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わかりやすいネーミング

一昨年、2018年に経済産業省が「デザイン経営」推進の宣言をしました。たぶん「デザイン経営」という言葉が公式デビューしたのもこの時だと思います(違ったらすみません)。読んで字のごとし、経営にデザイン(=感覚的・情緒的価値)を取り入れるというのがデザイン経営なのですが、実はこれ、特に新しい考え方ではありません。
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最近ではすっかり定着した感のある「ブランディング」もデザイン経営という大きな括りの中の1つの方法論です。また、デザインのビジネスへの影響力について理解が深い企業では、経営陣と対等なポジションに専属のアートディレクター/クリエイティブディレクターがいるというのも、今では特別なことではなくなりました。
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しかし、これまでもこういった話は数え切れないほどされてきているのに・・・なぜ今「デザイン経営」が波及してきたのか。
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理由は色々あると思いますが、「デザイン経営」という言葉の分かりやすさと、それを公に宣言したのが経済産業省だったというのが大きいんじゃないかと。
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クリエイティブ経営だと少し曖昧(本来は一番的確だけど)、アート経営だと意味が変わってしまうし、美意識経営だとなんだか薔薇の香りがしそうな雰囲気・・・。経営 + デザイン = デザイン経営 という誰もがイメージしやすいネーミングだからいいんだと思います。偉い人が分かりやすい言葉で言い放った結果、理解を得られた。そう解釈すると自然だし、ネーミングがいかに大切かということも分かりますね。
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ちなみにこの「ネーミング」も広義ではデザインの一部と言えます。

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designer is

デザイナーを味方につけると有利な時代

基本的にデザイナーはデザイン=制作物などを提供する人だと思われているので(←当たり前)、呼ばれるタイミングが遅い。作るものや予算配分など、発注の段階でほぼ全て決まっているケースも少なくありません。しかし、共感やストーリーといった感覚的・情緒的な価値が重要視される時代に、それではあまりにも勿体ない。
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「とにかく良いデザインをすること」に徹するタイプのデザイナーもいます。もちろんその方がいい場合もありますが、本来デザイナーのスキルや能力は、作る事だけではなく仕掛ける側から加わることでより大きな価値を生み出すことができる。「もっと早く言ってくれれば…」「先にそんなところまで決めてしまったのか…」と、悔しい思いをした経験のあるデザイナーも少なくないと思います。
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自分の場合、そういう時はできるだけその「前提」を変更してもらえるように努力はします。しかし企画や戦略を決める段階からデザイナーが参加できれば、そのようなロスが減るどころか課題共有や意思決定の精度がより高くなります。
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たとえば、「ロゴデザインをリニューアルする前に、ブランドの基盤となるコンセプトをしっかり言語化して、もう一度整理しませんか?」とか「御社のサービスの性質を考えると、web広告を毎月打つよりもコツコツと価値のある記事を積み上げることにコストをかけた方が、長期的に見てブランド価値の底上げとSEO効果が同時に期待できると思う」といった提案を早い段階で、しかも社内の会議でできる。このメリットはとても大きいはずです。
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デザイナーが下請けとしてではなく、相談相手として上流から携わる。
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制作物の発注よりも前の段階で「〇〇するために△△を作ろうと考えているんだけどどう思う?」「うちの会社にはこういう課題があるんだけどどうしたらいいだろうか」といった相談をしてもらうことが、より良い結果を生むためのポイントです。また、あくまで経験上ですが、これまでにデザインを重要視していなかった組織(企業・事業者・自治体など)の方が導入前と導入後の変化が大きく、必然的に効果も大きいと感じます。

デザイン経営の最初の一歩

デザイン経営を導入する最も簡単な方法は、意思決定の場にデザイナーを呼んでみることです。誤解を恐れずに言うと、それが一番手っ取り早い。
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ここで大切なのは、デザイナーとのコミュニケーションや情報共有に手を抜かないということ。そして、デザイナーが関わりやすい=尊重できる組織・チームを目指すこと。そうすることで過去の事例やデータを基にした科学的判断だけでなく、共感や体験といった顧客の感覚に目を向ける機会が増え、必然的にメンバーや社内の「感度」も上がります(これは本当!)。
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あと僕が言うとアレなんですが、デザイナーに相談費用や会議への参加費などを支払うのもいい方法だと思います。わざわざ来てもらって申し訳ないという気遣いが不要になりますし、正式に依頼をすることで、依頼する側もされる側もより一層真剣に課題に取り組めるはずだからです。

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難しく考えない方がいい

デザイン経営、中には「ブランド経営の焼き直しだ」「機能やビジネスモデルで負けている現実に目を背けているだけ」「うちはB to Bだから関係ない」なんていう意見もあります。
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もちろん色々な考えがあって然るべきで、だからこそこの世界は面白い。そこに絶対の正解なんてありません。
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しかし一方で、ストーリーや共感が大切な時代であることは変えようのない事実です。そしてこの「コロナ禍」というタイミング・・・これはシフトチェンジの大きなチャンスに感じます。正直、ローカルの市町村にとっては「今ここで手を打てるかどうか」という最後の分かれ道に立たされているように思えてなりません。
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・・・とまぁ状況を言葉にするとなんだか重大なことのように聞こえますね。
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いや、けっこう重大な事なんですが・・・最初から「デザイン経営の意義とは」みたいに難しく考えず、先述の通りまずはデザイナー(に限らずクリエイターと呼ばれる人)にちょっとだけ大切な何かを相談してみることから始めてみてはどうでしょうか。
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在庫を抱えたり高額な設備投資が必要な訳でもないので、ネクストステージへの第一歩としてはコストパフォーマンスも高いと思います。経済産業省WEBサイトでデザイン経営に関する資料がPDF形式でダウンロードできるのでぜひ時間を作って読んでみてください。

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デザイナーと仕事をする時のコツや環境づくりなど、この「デザイン経営」というテーマについてはまた近いうちに書きたいと思います。

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Daisuke Takada